2009年8月13日

没後四十年 成瀬巳喜男の世界

没後四十年 成瀬巳喜男の世界
神保町シアターで一ヶ月以上も行われている「没後四十年 成瀬巳喜男の世界」へ行ったのだが、相変わらず成瀬特集は大好評で連日、好評満員との事だったので、その辺りを考慮して時間的余裕をもって行った。
「ひき逃げ」と「妻として女として」を観たが、「ひき逃げ」はのっけからまだ工場地帯に空き地の多い65年ころの根岸、本牧と三渓園をバックに逢い引きしている司葉子と中山仁の登場から始まり、中華街ロケシーン、打越橋から山元町、三ツ沢競技場と思いっきり近所と知った場所ばかりが舞台の話しだったので驚きと、より興味を持って楽しめた。脚本の松山善三は実家が磯子だからホンを書く上で設定しやすかったんだろうなと想像する。

「妻として女として」はまぁ、いわゆる女の確執モノで成瀬の得意な物語だが、本妻の淡島千景と愛人の高峰秀子の狭間でオロオロするばかりの森雅之の存在がたまらなく良い。あまりの頼りなさと無責任さが同じ同性である私が見ていても時折、イラっとさせられるのだが、こういう時の男の肝の据わらない感じや女性から愛想尽かされる感じ、そして女性達に詰め寄られてもひたすら及び腰で何らの決断も出来ない男のダメな感じがもう秀逸。森雅之の上手さと成瀬の演出は本当に鋭い。

見終わって劇場の表へ出るとタバコ吸いながら一緒にいる男性と「妻として女として」の談笑している小野武彦が居た。

それにしても、こうもハズレの作品がない成瀬にはただただ敬服するし、溝口、小津、黒澤、といわゆる世界的巨匠の三人の監督にちょっと遅れて仲間入りした成瀬こそが、最も、監督としての理想形に近いのではないのか、と強く思う。

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