2008年01月31日

市川崑の『日本橋』ではねぇ…

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泉鏡花原作、市川崑監督作品の『日本橋』

いわゆる鏡花モノと言われているものだけど、この「日本橋」といえば戦前のサイレントで溝口健二が作っており、事あるごとに淀長さんがこの溝口作品の『日本橋』を絶賛している。もちろん小生も観てみたくてしょうがないのだが、この溝口版は多くの溝口作品同様、フィルムが消失していて観る事が現在出来ない。
う~むむ…この“観たい衝動”をどこへぶつければ良いのだ!と思いつつとりあえず市川版「日本橋」にぶつけてみる事にした。ただ市川崑なのがもの凄く気になったが…
市川崑の作品は好きな作品も幾つかあるし今日では日本映画界最後の大御所なのだけどどうも作風があまり好きではない。人間の描き方に対しての追い込みが甘くなるしちょっと狙いすぎのカットが気になってしまいどうも本筋から気が散ってしまう事が多々ある。

とりあえず鑑賞してみると、ああ、やはりいけない…もったいぶった演出、男と別れて狂ってしまう淡島千景演じるお孝の悲しさが充分に出ていないし、山本富士子の美しさも充分に表現されているとは言いがたい。そのうえこの映画は前編セット撮影なので日本橋が舞台だというのに充分に世界観が伝わってこない。永田雅一が製作なんだから潤沢な製作費でオープンセット建てて撮れば鏡花のエロティシズムと市川崑のロマンティシズムが交わってもっとよい作品になったと思うのだけど。

やはりこうなると溝口健二の『日本橋』がどこからか偶然にでも発見される奇跡を願うしかない。本当に本当にどこにも無いのかなぁ~。

2008年01月25日

まんまるお月様と「晩春」

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帰り掛けに見かけたお月様。久しぶりに見事な橙色だ、ちょっと怖いくらい輝いている…


最近、溝口健二の凄さを再認識してからすっかり溝口ワールドにドップリと浸かっている状態が続いているのだが、そんな中、「もう一度ちゃんと日本映画の名作を見直したりして映画を勉強し直そう」などと自分に言い訳しながらちょこちょこ鑑賞している。

この前は映像学時代以来となる小津安二郎の「晩春」を鑑賞。この作品は鑑賞当時、あのセクシャルな親子関係が受け付けなくてどちらかというと不快な作品という位置付けだったのだが、十数年経って改めて観ると不思議とその近親相姦的なある種のタブーを連想させる小津の考えというものが、なんとなく意図として理解出来た様な気がしてとっても好きな作品になった。単に家族内の出来事を描いているだけではなく、人間の本質的なエゴを冷徹に眺め描いている。その意味で小津のするどい批判精神が素晴らしく発揮されてる作品で今更ながら名作であることに感動。やはり映画はストーリー運びなどに振り回されるものではなく1カット1カットを大切に観るものなのだ。

この「晩春」に長い間付いて回る近親相姦議論についても“壷”カットに関しての問題でも、今だ小津研究家の間では明確な結論は出ていないようだけど、個人的にはタブーに触れるという無意識下の意識として小津監督の中にはあったと思う。

素晴らしい映画だ。

2008年01月16日

古雑誌・アサヒグラフ増刊

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神保町の矢口書店で購入したアサヒグラフの増刊「追悼・三船敏郎」と「追悼・黒澤明」それと都築政昭著「天国と地獄 ドキュメント・憤怒のサスペンス」

アサヒグラフの方は発売当時に買いそびれたまま存在自体を忘れ去っていたものだけに、発見した時にもの凄くテンションが上がってしまい即購入。「追悼・三船敏郎」、「追悼・黒澤明」共にスチール写真やスナップ写真が充実していてファンには嬉しい内容になってる上に「追悼・三船~」の方では香川京子さんによる追悼記事が載っていてさらに大満足な買い物となった。

都築政昭著「天国と地獄 ドキュメント・憤怒のサスペンス」もやはりいつか「読まねば…」と思っていたところだったので合わせて購入。あの有名な特急こだまでの“身代金受け渡し”撮影が、全車両貸切の一発撮りだったためスタッフ・キャスト共に異常なテンションの雰囲気だった…などなど詳細に書かれて制作現場の熱気が伝わってくる。昔、この撮影で使った吉田カバン特注による身代金を入れたカバン小道具を拝見した事があるけど、その事も思い出しながら読んでいるとちょっと感動的な気分。

2008年01月09日

溝口健二

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溝口健二の作品に助監督として関わっていた新藤兼人が溝口健二の人生を追っかけながら、その人物像と作品の本質に迫るべく制作された1975年公開のドキュメント映画作品「ある映画監督の生涯」を観た。

この映画の監督である新藤自身がインタビュアー&ナレーションも自ら努めているのが、溝口健二を崇拝している新藤監督だけに溝口健二の複雑な人間性の闇の部分に関して切り込み方が甘くなるというか客観性が弱く好意的に解釈してしまうのがやや鼻に付く。もっとも、このドキュメントは偉大なミゾグチ作品を作り上げた偉大な映画監督“溝口健二”を讃える為に制作されたようなものだから無理もないんだけど…それにしても、溝口との確執があった女優入江たか子に対するインタビューや溝口が惚れていたとされる田中絹代に対してのインタビューでも幾分か思い込み解釈と押し付けがましさが感じられてしまう。入江も田中もスッとかわしているのだが、単刀直入に訊かずもっとシャープに切り込んでいけばもっと強く違う表情が引き出せていたのでは?と観ていて幾分か消化不良になる。
それでも山田五十鈴や京マチコ、木暮実千代、進藤英太郎、浦辺粂子、等々溝口作品に欠かせない出演者や新藤と同じくのちに映画監督になった増村保造や大映社長だった永田雅一など溝口が映画監督になる前の日活時代を含め彼を良く知る大勢の関係者の証言など今では大変貴重な映像として記録されている事はとても価値が高く溝口作品のファンならぜひ観ておくべき資料ではないだろうか。

高校時代~映像学校時代も個人的には黒澤明に傾倒していたし、小津安二郎の映画にも親しんでいたのでそれなりな事は知っていたが、溝口健二については純粋に作品についての事以外はあまり知らなかったので、そういう意味ではたいへん興味深かったし勉強になった。
この作品鑑賞後、久しぶりに『雨月物語』『山椒大夫』と鑑賞したが観る度に涙が込み上がってきてしまう。真に日本的な美しさを持った素晴らしい映画だ。